TCFDへの取組み
TCFD取組みについての概要
気候変動は、国・地域を超えて地球規模の課題であり、温室効果ガスの削減は世界共通の目標となっています。
当社グループでは、気候変動による事業機会の取込み及びリスクへの適切な対応を行うことが重要と考え、2023年度より、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に準じた気候変動シナリオ分析を実施し、2023年4月にTCFD提言への賛同を表明しました。
当社グループでは、気候変動シナリオ分析を通して、気候変動が将来、当社グループに及ぼすリスクや機会を特定し、事業戦略の策定に活かすことで、より柔軟で堅牢な戦略を立案し、将来のリスクに対するレジリエンスを高めていきます。
TCFD開示事項
ガバナンス
当社グループでは、社会的課題解決と持続可能な成長に向け、気候変動対策をはじめとしたサステナビリティへの取組み推進のために取締役会の下に、社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を2024年10月1日に設置しました。
サステナビリティ委員会は、課題解決に向けた各タスクフォースで構成されており、サステナビリティ経営方針や必要な戦略の立案を行うだけでなく、気候変動に関連するリスクの特定、評価、取組み状況の確認や評価、改善について審議を行い、その内容を取締役会へ報告し、取締役会から提言を受けることでサステナビリティ施策を推進する役割を担っています。
戦略
中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスクを踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃シナリオおよび4℃シナリオ)※を参照して、2030年までの長期的な当社への影響を考察し、バルブ事業と製鋼事業を対象にシナリオ分析を実施しました。
※2℃シナリオ(移行):気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ
4℃シナリオ(物理):気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ
主な機会 | 事業への影響 | 重要度 | 発現 時期 |
主な対応策 | |||
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1.5℃/2℃ シナリオ |
4℃ シナリオ |
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機会 | 製品/ サービス |
GHG排出規制の強化 | 化石燃料の使用が制限され、CO2排出量の少ない原子力発電所の稼働比率が高まることにより、バルブ及びメンテナンスの売上が増加する。 | 高 | - | 短中期 |
【脱炭素社会移行による原発産業の強化】●国内の既存原発の稼働維持と新規原発建設への貢献 【脱炭素社会に向けた事業ポートフォリオの見直し】
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平均気温の上昇 | 夏季に冷房・冷却の電力需要が高まることで新規の原子力発電所が増加し、バルブ及びメンテナンスの売上が増加する。 | - | 中~高 | 中長期 | |||
GHG排出規制の強化 | CO2排出量の少ない水素・アンモニア発電(混焼・専焼火力発電)が拡大し、設備に対応したバルブ製品・メンテナンスへ参入することにより、売上が増加する。 | 高 | - | 短中期 | |||
脱炭素技術の向上 | CO2排出量の少ない水素設備が増加し、水素用バルブの需要が増加することで、売上が増加する。 | 中~高 | - | ||||
平均気温の上昇 | 夏季に冷房・冷却の電力需要が高まることで発電所の稼働率が上がり、プラントの維持管理需要が増加し、バルブ及びメンテナンスの売上が増加する。また、定期検査工事の安定した受注が確保できる。 | - | 中~高 | 中長期 | |||
市場 | 炭素税・賦課金や排出量取引制度の拡大 | CO2排出量の少ない水素・アンモニア等脱炭素燃料の利用が促進され、市場に参入することで、売上が増加する。 | 中~高 | - | 短中期 |
主なリスク | 事業への影響 | 重要度 | 発現 時期 |
主な対応策 | ||||
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1.5℃/2℃ シナリオ |
4℃ シナリオ |
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移行 リスク |
政策・法規制リスク | 炭素税・賦課金や排出量取引制度の拡大 | 炭素税支払いや排出権購入が発生し、コストが増加する。 | 中~高 | - | 短中期 |
【環境価値を高める取組み】●化石由来燃料からの転換
●GHG排出量削減
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石炭火力発電所等の利用制限による新設ユニットの建設停止、メンテナンスの需要低下により、売上が減少する。 | 中~高 | - |
【脱炭素社会に向けた
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【既存設備メンテナンスの維持・向上】●バルブ製品の改良・メンテナンス技術の開発 |
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法規制の強化による化石燃料の使用制限 | 石油関連のプラントが停止になり、プラント向けの工事等の売上が減少する。また、火力発電に関する受注が減少し、売上が減少する。 | 中~高 | - | |||||
市場 リスク |
化石燃料の枯渇・原油価格の高騰 | 化石燃料を使用する火力発電所が稼働しなくなり、メンテナンスの売上が減少する。 | 中~高 | - | ||||
政策・法規制リスク | 再生可能エネルギーに偏った電源構成施策 | 火力・原子力発電所の再稼働が進まず、売上が減少する。また、設計・保守技術等の伝承の機会が失われ、事業継続への危機感が増す。 | 中~高 | - |
【脱炭素社会移行による原発産業の強化】●国内の既存原発の稼働維持への貢献 |
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物理的 リスク |
急性 リスク |
台風・洪水・豪雨の頻発化、激甚化 | 自社工場の被災により生産が停止し、売上が減少する。 また、工場及び設備の修繕費、復旧コストが増加する。 |
- | 高 | 長期 | 【異常気象・自然災害への対応】 |
指標および目標
区分 | 排出量 (tCO2) |
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Scope1(燃料の燃焼等)(注)1 | 2,182 | |
Scope2 (電気の使用) |
ロケーション基準 (注)2 |
2,447 |
マーケット基準 (注)3 |
2,093 | |
計 (Scope1+2) |
(ロケーション基準) | 4,629 |
(マーケット基準) | 4,275 |
当社グループでは、2022年9月期における提出会社に伴う温室効果ガス排出量を、国際基準であるGHGプロトコルに準拠して算定しました。2022年9月期におけるScope1、Scope2の排出量は以下のとおりであります。
- (注)1:
- エネルギーの使用、工業プロセス、廃棄物、六フッ化硫黄(SF6)・フロン(HFC)の漏えいによるCO2排出量を合計
- (注)2:
- 日本全国平均係数に基づき算定
- (注)3:
- 地球温暖化対策の推進に関する法律で定められた電気事業者別の調整後排出係数に基づき算定
当社グループでは、気候関連のリスクと機会をマネジメントするため、2050年カーボンニュートラルに向けて、当社グループ事業に伴う温室効果ガス排出量の削減に努めております。2022年9月期の温室効果ガス排出量の算定結果を踏まえ、今後は、当社グループにとってより効果の高い取組みを把握するとともに、具体的な削減目標の検討を進めてまいります。